夕立の後の香り/即興ゴルコンダ(仮)未投稿
こうだたけみ

安全な部屋から庭を眺める
緑色の雑草に当たって跳ねる雨粒
驚いたように飛び上がるアマガエル
裏返ったまま濡れていく黒い突っ掛け
畳に投げ出された妹の両足
夏休みの宿題を広げるだけ広げて
雷鳴は、いつだって遠い

あんずの里のうつくしいころに
私の妹は生まれたのです
預けられた二歳にならない私は
ここにいない母を探して夜通し泣いたのです

一向に進まない宿題を放り出し
庭に飛ばした西瓜の種のことを考える
赤く畳の跡のついた膝を指でなぞる
鉛筆が転がる
雷鳴が遠退く
妹の、寝息が聞こえる

夕立が行ってしまうと母が
蚊取り線香に火をつけて
夕飯の支度を手伝うようにと呼びに来るから
夏は今もそこでけぶっているのです


自由詩 夕立の後の香り/即興ゴルコンダ(仮)未投稿 Copyright こうだたけみ 2014-08-17 22:38:18
notebook Home 戻る