我々の暗号
草野春心



  暗号は箪笥にしまわれていたが
  防虫剤の匂いに毒されもう使い道はなかった
  幼少期に誰もが熱をあげやがて棄て去った玩具同様
  為されるべきことは二、三あったものの
  その手段を我々は長らく失念しており
  陽射しに似た雨は冷えた傘のうえに降り
  雨に似た陽射しが貴方のカーディガンの袖を濡らす
  足元に落ちたピーナツが形成する音の直方体
  このうえない、我々の、正確な、破裂




自由詩 我々の暗号 Copyright 草野春心 2014-08-17 22:22:24
notebook Home