モドキ
nonya
なかなか膨らんでくれない風船に
飽きもせず息を吹き込み続ける
何処かに穴が開いているのを知りながら
滑稽な独り遊びを止めることが出来ない
春には妄想を咲かせて散らして
夏には傷痕を弄んで痛がって
秋には郷愁を嘲笑って抱き締めて
冬には孤独を気取って飼い慣らせず
なかなか膨らんでくれない風船は
未だに空の素っ気なさを知らず
明け透けな虹の嘘っぱちを見抜けず
浮力のない言葉の欠片を漏らすばかり
それでも
雲のように眺められたくて
光のように弾んでみたくて
膨らまない風船に息を吹き込み続ける
あくまでも
耳ではなく目から忍び込むため
声ではなく文字を響かせるため
萎んだ風船モドキに想いを吹き込み続ける
開いた穴なんて探さずに
いつまでもモドキのまま
おそらく息と想いが続く限り