『こころ』
あおい満月

ふたしかさ。
たしかなふたしかさを持つ
それが彼のこころ。

みえるようで
みえない。
いつも家族が集まる夕飯時に
そっと背中を通って
硝子窓を覗く
それが彼の部屋

ふれていても
すきとおる。
かたいタイルに立つ
バスルームから
ふってくるシャワーの熱
それが彼の体温

はなしていても
あいのてのない。
ひとことだけが
雨のようにいたい
それが彼との会話
ベッドのなかで交わした糸電話
空気をつたう
風の吐息

えぐるもの。
皮膚を裂いて
肉を切り裂き
血を求める衝動
どこまでも続く
砂漠の旅
それが彼の生き
血を流し、
血を求める獣。

そんな彼を、
あたしは愛する。
詩という、
一篇の
確かな不確かさを


自由詩 『こころ』 Copyright あおい満月 2014-08-17 11:39:20
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