憂うつな子ども
ユッカ
友達いないんだというのがあなたの口癖
それはただの気分の問題だけど
その言葉でもって友達を減らしているのは事実だ
「無神経」という文字をある日せんせいが黒板に大きく書いた
お前のことだと指をさされた
小学4年のことである
このクラスにはいじめがあります
せんせいはね
いじめのあるなしよりも
それを見て見ぬふりをしているひとがいることが許せません
そうですか
いじめはよくないことですよね
趣味のわるいあそびです
でもこうやってかえりの会で話をして
うわべだけ 平和をとりもどしても
これから卒業までのあいだ そのひとが人気者になるということは
あり得るんでしょうか
わたし そのひとからもらったラブレターを
破いたことがあります
毎日同じ場所で待ち伏せされてるのが
気持ち悪くて
たった五時間の授業にも耐えられずにいた
わたしに誰も気づいていないと思っていた
けれど幾度となく
くり返されるわたしの仮病に
何度となく
心配する大人達のまなざしは
やさしくするのが何よりの暴力だということを知っているかのようだ
いい子になりたくてあなたと話していたわけではない
いつも精一杯背伸びした会話
子どもは無邪気だとほめるあなたの言葉がわたしのすべてを侮辱している
あなたこそがいつも無邪気で
無神経だった
あなたの言うところの子どもというのは
学年のことでしかなかったのだから
保健室に行けず廊下でうずくまった日々
ひとつひとつのシーンに台詞を当てはめてみる
今ならあのとき
どんな言葉を言うべきだったのかわかると
巻き戻しの利かない過去
胸焼けのなか
雨の日に目を閉じ 北階段の踊り場で 音がやむのを待っている
あなたはわたしの友人
埋まることのない空白