盆帰り
藤原絵理子



布団は ばあちゃんの香りがしている
少し脚が不自由だけど 元気で
働き者のばあちゃんが干しておいてくれた
布団は日向の香りが充満している


ばあちゃんは もう年だから
同じ話を 何度も 何度も
なにか 夢でも 見ているように
自分の世界に 美しい影絵のように


迎え火は 揺らめいて 向こう側の
懐かしい人たちの やさしい面影だけを
連れてくる やさしさだけを 見つめた


蚊帳越しに 黒い梁を見上げて
ばあちゃんの 他愛ない昔話を
子守唄の代わりに 聞いている


自由詩 盆帰り Copyright 藤原絵理子 2014-08-15 20:42:35
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