紙きれにうかんだ怪談みたいなダイアリー
さわ田マヨネ

しかくてきあるいは手にひびく感触として
ぷつぷつという音はなるのでしょう

そうやってミシン目をきりはなすみたいに
つつましくやぶられていった約束の
かたわれがまだどこかにあったようなきがしてて




ひさびさな 
にねんぶりくらいの帰省でのこと
いえにかえってまず思ったのは
実家でのいごこちが 
(しらぬまに)
いちだんかいだけあげられているようで

だれかのいんぼうなのだろうか
そうしたぬくもりにふやけはじめていたゆびさきで
それとなくあけてしまった
学習机のさんばんめ のひきだしからは
わりとつかいこんでいたはずなのに
きれいな状態の算数セットがとりのこされていて
そのえもいわれぬ 
たたずまいにただのまれてしまう

こわいものみたさなのか
背徳感のようなものが逆にかりたてていたのか
やめればいいのに
そこで箱のなかからひとつだけ
おはじきをとりだしてしまっていた
そっとぬきとってしまっていた
そうやってほんのりとみたされていくここち
すこしだけ未完成なのだと思う
算数セットの箱はふっと
しずかにいろあせていくようだった

(だれがこまるわけでもないのに)
僕はなんだかうすまっていくみたい
べつにみなかったふりをしていたのではないけれど
机に積まれたプリントからは
日曜日がはみだしていて
(もうずっとはみだしっぱなしのやつだった)
それはふよふよとただようようでいて
待ちあわせ場所をさがすように
(しこう回路はいまもまだ)
やわらかいひだまりのなかをさまよっていた


自由詩 紙きれにうかんだ怪談みたいなダイアリー Copyright さわ田マヨネ 2014-08-14 11:25:01
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