忘却
瑞海



ゆっくり縁側に座って
西瓜を食べた夏

こっそり火鉢の中の
お餅を盗んだ冬

いつだって隣に曲がった背中
顔の皺が優しさの証

手を引いて散歩をして
バスの停留所のベンチでずっと喋って
お母さんを困らせて

傍にずっといた自然


今だって
名前も忘れてしまっているけど

大きくなったね、綺麗やねえ

と言われると
嬉しいはずなのに涙が止まらない

背後に迫る現実を受け止め難くて
吐き出しそうで涙

あなたが握りしめる強さ
忘れないから
どうか私も思い出して

どうかどうか
あの縁側で
曲げた背中で
こたつに入って
皺くちゃの笑顔で
ずっと待って欲しい


神様どうか
もう少し待ってください




自由詩 忘却 Copyright 瑞海 2014-08-13 23:32:13
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