忘却
瑞海
ゆっくり縁側に座って
西瓜を食べた夏
こっそり火鉢の中の
お餅を盗んだ冬
いつだって隣に曲がった背中
顔の皺が優しさの証
手を引いて散歩をして
バスの停留所のベンチでずっと喋って
お母さんを困らせて
傍にずっといた自然
今だって
名前も忘れてしまっているけど
大きくなったね、綺麗やねえ
と言われると
嬉しいはずなのに涙が止まらない
背後に迫る現実を受け止め難くて
吐き出しそうで涙
あなたが握りしめる強さ
忘れないから
どうか私も思い出して
どうかどうか
あの縁側で
曲げた背中で
こたつに入って
皺くちゃの笑顔で
ずっと待って欲しい
神様どうか
もう少し待ってください