保育所をさがして/古泉さんバージョン
モリマサ公
生後四ヶ月の娘を朝の5時からあずけれるような
保育所をさんざん探してさんざん電話をかけたあと
少し詩を読んだ
被爆者のケロイドを体に負うことが
物事を理解することではない
とりだされた真実
加害者でもなく被害者でもないものによりそう沈黙
語り出す後世に残された解釈
311という数字に関わったたくさんのこころがその場所をなすすべもなくみつめている
そこに家族の姿を探す必要のない者にも
そこに家族の姿を探す必要のある者にも
津波に飲み込まれていく家やたんぼ
多くの人々はそれを映像で知る
あるいは音であるいは文字で
写真で
どっからどこまでを今と呼ぶのかわからない
いくつもの
レイヤーが重なっていくそれぞれの
距離が
操作され表示されて
わたしたちのピントはあわせられていく
感覚的な現象そのものにすら同じように
月日がたちやがて薄れる記憶たちと同様に
なにも知らないままの闇はおちてくる平等に
星たちの数は昨日とさほどかわらない
窓の外には何の保証も無く
窓の内側でわたしたちは無邪気にただ笑う
橋を渡る時必ず覗き込む水面の反射
沈んでいる自転車
記憶に残りそうもない風景で立ち止まる
振り返る
水たまりや家の隙間で
とじられていくまぶたの音
わたしたちはどこにだっている
ぴかぴかのシャトルに乗り込む飛行士のようなすがたで
画面の中で銃を抱いた
泥だらけのはだしの子のやぶけたポッケの中や
くろい枝の節々やそのきっ先で光る緑のはっぱのうらにだって
あ
電話だ
今?
へいきへいき
まじで?
生きてるよ〜
うん
まじでー?生きてるよ〜
うん
生きてるよ〜
まじで!?
えー!?