闇夜のバス
……とある蛙

空港からへ
豪勢なバスに疎らな人々

錦江湾に屹立する桜島が背後から覆い被さる道
雄大な景色が灰色に押し潰される。
逃げるように疾走するバスは異様に速い
闇夜がとんでもないスピードで飛び去って行く。
片側一車線か二車線か
ヘッドライトが反対車線から現れない山道
猛スピードでこの闇夜の山道を突っ走るバス
決まった時刻表があるのか
途中のバス停に止まることはない
ただひたすら突っ走って急カーブ
坂道前方を走る軽自動車を抜き去る
目的地の裁判所も通り過ぎ
田舎町のバスセンターでしばし時間調整
大隅半島最大の都会のバスターミナルは
赤提灯の似合う小さなベンチが並ぶ路地だった。
もの悲しいベンチには
所在なげに涼をとる婆ぁさんたち
この街の爺さんたちはもう寝静まったのか
午後八時、鹿屋の風景。
市役所方向へ
またゆったりと走り出すバス
街の闇に向かって走り出すバス


自由詩 闇夜のバス Copyright ……とある蛙 2014-08-11 12:31:52
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