【 物忘れ 】
泡沫恋歌

ここんところ
物忘れが多くなった
年のせいにしたくないが
やっぱり年のせいか

特に人の名前を失念してしまう
テレビタレントは元より
知り合いの名字さえ出てこない

先日も
道で女性に挨拶されたが
顔には見覚えがある
その人の住んでいる家も知っている
――だが、名字が出てこない

はてな?

何百人もの顧客を仕事で扱っている
全部の顔と名前が一致するのは難しい
それでも思い出せないとなると……
一日中考えてしまう

気になる 気になる 気になる

いくら懸命に考えても
物忘れの答えがみつからない
まだ呆けたと認めたくないが
もういいやと諦めかけた頃に――

お茶碗洗ってる時に、あ!
お風呂に浸かってる時、あ!
布団の中で、あ!

布を噛んで動かなかったジッパーが
急にス―――と動いたように
謎だったワードが
頭の中に不意に降ってきた

やっと、これで安心できる!

私の老後の戦いは
この厄介な物忘れになるだろう




                               2014/08/11



自由詩 【 物忘れ 】 Copyright 泡沫恋歌 2014-08-11 11:42:53
notebook Home 戻る