姉さん女房に捧ぐばらっど
服部 剛
ふだんは優しい女房が
時折、般若の顔になり
言葉の弾丸は
だ・だ・だ・だ・だ
だ・だ・だ・だ・だ
だ・だ・だ・だ・だ
柳のような面影で
げっそりとした
僕の髪を靡かせ
遠い彼方へ通過してゆく
「うん、うん、そうだな…」と頷きつつも
(男はつらい…)とうつむきつつも
少し離れた公園に散歩して避難して
よーく考えりゃぁ
詩人なんぞを志す薄給の夫を掌の上で泳がす
姉さん女房に(やっぱり頭があがらんわ…)
そうしてようやっと感謝の念はじわり…湧き
木の葉を揺らすそよ風は胸にひりり…吹き
なんとかふんばって支えてくれる
女房だって、人間であるゆえ
時折疲れちゃった日は
(さんどばっくを買って出よう!)
そんな妙な勇気に、僕は
公園のベンチから立ち上がるのです
そうして再び公園の木々の葉を
風は吹き過ぎ――僕は思う
百の言葉の弾丸が過ぎた後
旦那と女房の間に残る
食卓の
静寂について