ある詩人
浩一
あなたの「詩」はたいてい
心療内科かなんかの 清潔な壁に
清潔に飾られている
そして心の弱った人達がやって来ると
そのもったいぶった毛筆で書かれた言葉で
かれらの弱った心を慰撫する
それはまるで そ知らぬ顔で
若い娘の尻を後ろから撫で上げる手付きそのままに
弱った人の弱った心を撫で上げる
シッパイシタッテイイジャナイカ
ニンゲンナノダカラ と
それはまるで甘いトラップ
心の弱った人々を共犯に誘うあぶない言葉だ
あるいはまた
その意味ありげな毛筆の筆使いは別にしても
あなたの「詩」は意味ばかりで成り立っている
弱い心は自分に都合のよい意味に縋る
無意識にしろあなたは其のことを充分承知している
承知していながら弱い人の弱った心につけ込む
そう あなたはヒューマニズムという悪臭を放つ
ことばのペテン師
弱った心をターゲットにした狡賢い釣り師だ
ああ 今日もあなたの「詩」が
どこかの白い清潔な壁にうやうやしく飾られている