「おかえりなさい」
るるりら

雹かな?と思ったけど、シラウオだった
晴れマークの天気予報が
小魚が 朗らかに ピチピチはねて
アスファルトの下で壊死していた イノチも復活

死者だって降ってきて 必死に飛び跳ねている
ハートのエンジン廻せ!手には石槍り
業火に焼かれたものたちの 祝祭だ
しきりに降り続ける半透明の命たち

しらとり隊のみなさんは 鮮やかな誘導で
生者も死者も高台に もっと山へと 云っている
そういえば このあたりの山々も かつては海だった
すべてが海のようなのか 確かめに行こう

「くだらないか」と だれかが云ったが下れない
上も下もないのだから下れない
眼前の天から降るモノに心奪われ、明日ある限り上に行く
足元でジジと油蝉が、のた打ち回っていたが 彼も空を飛んだ

「子捨て岩」と書かれた札の先にある崖に さしかかった
幼子達が 崖の下方から わらわら湧いていて
ここいらの過去の惨状を 初めて知った
崖の西の一部が 狭く開いていて 水が滝壺に向かって落ちている

滝に近づくと水音がだんだん大きく聞こえてきた
足の真下で滝の音がした。しらうおたちも滝へ
しらとり隊のみなさんも滝へ亡者のみなさんも
迷いのない様子で 滝の飛沫の中へ消えてゆく

わたしの背中を叩く人が居たので 振り向くと
この間、葬儀をおえたばかりの 弟だった
「おさきに」と言って たかしくんも滝へ 
しらうおの魚群も
滝へ   滝へ  滝へ  滝へ滝へ滝へ滝へ滝へ

わたしの足先がぐらついて 私も滝の豪音へ
滝の中に居ると 轟音は微かに 感じられた
遠くで音の揺らぎを感じる体が芯まで冷たい
体をゆさぶると鰭があった わたしは魚なの?

滝壺の近くを 泳ぎまわった。胸鰭を ひらひら
尾鰭を強く降ると 底深くもぐりこんだ。川蟹を
つついてみたり 苔の間で佇んだり しばらく
尾鰭のある身体を確かめて やがて からだを

ゆっくりと大きくしならせて 滝壺に向かった
滝壺の奥にいくほど しだいに青が深まり
経験したことないほど頭がさえ 血の巡りが理解できる 
この青の深さは濃紺の先に つづく     ここは宇宙


自由詩 「おかえりなさい」 Copyright るるりら 2014-08-01 09:13:55
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