『嘘』
あおい満月

携帯電話のディスプレイは
血の指紋であふれている
無数の未完成のことばの指紋
指でなぞれば
嘘に近づく

皮を剥けば剥くほど
なくなっていく野菜になって
うすい記憶の皮膜になって消えていく
この傷つけた腕の血は
その目にはどううつるのか
蜘蛛の巣を覗き込んでいる
睫毛にといかける

毛孔から
血が滲み出す
血は脚をつたって
車内の床へと流れていく
誰の目にも見えて
誰の目にもみえない
携帯電話が
手から滑りおちる

(落としましたよ)

呼ばれた声に
背中を掴まれて
血がひいていく

ま・き・も・ど・さ・れ・る


自由詩 『嘘』 Copyright あおい満月 2014-07-31 21:42:13
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