無力
小川麻由美

から騒ぎのヘッドフォン
耳から外した途端
空虚がなだれ込んだ
世界は静止してしまった

私の体はがくんと落ち
その場で手にした石を
池に投げ入れても
波紋さえも描かない

生気を奪われ もはや
色に名前などない
花に名前などない
雲に名前などない

厚みなど無くなった
平面で固くなったまま
涙は溜まる一方
流れる事を忘れた

私はあなたに言えなかった
私はあなたに叫べなかった
あれを止められたのは
私だけだったはず

そう私だけだったはず


自由詩 無力 Copyright 小川麻由美 2014-07-30 07:05:24
notebook Home 戻る