秘密の恋
浩一

表通りの公道を
なにかに反対しているらしい
葬列のような賑わいの
長いデモ隊の列が通り過ぎたあと

裏通りの廃屋の
無人のビルディングの暗がりで
なにも反対していない少年と少女の
秘密の恋が成就する

ひっそりと
ふるえる氷の胸と胸をあわせ
暗がりのなかで
たがいの燃える頬に触れる

そして
わななく真っ赤な唇で
何度も何度も
痛々しいくちづけをする

やがて少年はめくらになるだろう
やがて少女はつんぼになるだろう

とおくで デモ隊の
力ないシュプレヒコールが
力ない抗議声明が
かすかに聞こえていた


自由詩 秘密の恋 Copyright 浩一 2014-07-27 19:24:46
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