晩餐
あおい満月


のみこむほど
のどに毛がはえてくる
缶チューハイは
めぐりめぐる
血をおしとどめる
からから
血の笑い声がきこえる
ひとりになりたくないだけだろ
なをかえたいだけだろ



とじこもった
西陽のさすトイレは
腕をひっかいたあとの
血をゆるくてらす
秒針はうずになって
風をのみこんでいく

**

血のいろをうつした
硝子の向こうに
ゆがんだリビングがみえる
向かいに座っている母親の顔の隈は
日を追うごとに濃くなって
血を滲ませている
いつだってリビングは
血だらけだ
娘の指の爪にも血が滲んでいる

***

いつものように
黄色いチューブに
乗って家にかえる
チューブのなかは
夏の明日の声で
ざわめいている
アナウンスに投げ込まれていく
目、顔、頭、
誰として触れあっても気がつかない
あるいは、
もえたつ焔を秘めている
窓越しの向こうの
食卓では、
今日はどんな晩餐が
まっているのか
沈黙と深いため息が
皮膚を食いちぎり
血をにじませる晩餐が



自由詩 晩餐 Copyright あおい満月 2014-07-23 22:04:48
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