汽車に乗っていこう
黒髪

鉄道模型で遊ぶ人が思うのは彼方ではなく閉じられた世界
苦しみにとらわれた人が思うのは自らではなく開いた状態の他者
模型の汽車は夢を吐けるのだろう
苦しみの小人が生まれ夢の中を歩き出す
地球を一周する鉄道に乗っていこう
地球の裏側に昨日病気で亡くなった犬の骸を埋めてこよう
今は不可能なことも
幾つかはほんとになるのかもね
そうやって生きていくときの、可能性は
人間のさだめ、悲しいさだめを負ってから定まるのかもね
小さな可能性も無視できない、自分に切迫した人間は、僕以外にもいるかもね
呼んでいる、遠くに汽笛が
もちろん僕のためではない──
孤独は終わって欲しい、普通のことが欲しいと切に願う
いつまでも待ってる
死を超えて
だれでも
笑顔あふれる町に住みたいよね
だから僕は笑顔を一生懸命に練習するんだ
背を向けた人にこちらを向いて欲しい
ほんとは愛しているって言って欲しい
だれでもいい、なにも人のためにしたことがない僕の
おかしくなった頭を笑ってやって下さい
誰も住まない永遠の町のあの角を曲がったら
僕が泣いている場所にたどり着くから
照れ笑いが弾けるような
立派なパーティーを開くよ


自由詩 汽車に乗っていこう Copyright 黒髪 2014-07-23 17:49:18
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