おかあさん覚えていますか
私が生まれた夏の夕暮れ

たった一枚残る写真に
疲れ果てやつれた様子の
寝巻の母に見守られ
同じように疲れた顔の
小さな赤ちゃん
夏のお産は大変だったことでしょう

その上
生まれることをその子は拒み続けたという
本当は
貴女が産むことを拒んだのではなかったですか
初めての子どもを事故で亡くしたばかりだった
夏のお産は辛かったでしょう
生んでくださってありがとう

真夏の雲一つない青空と
風に揺れる木々の梢を
見上げるたびに
深い悲しみにそっくりの
言い知れぬ懐かしさにかられるのはなぜか

３４回目の誕生日に
やっと気が付きました
私も赤ちゃんを産んだ夏
ただ心細く
あの子を抱いて
ぽろぽろ涙をこぼしていた