ジャズ
葉leaf
都市の迷路に波打っている緑の原点たち
原点たちはどんな香りをも演繹せず
冴え渡ったおしゃべりの隙間に破裂して飛び散っている
おしゃべりは思想という場違いな花を排水溝に流し続け
ビル群の記号的メッセージをざわめきながら看過する
原点は内容や伝達による波の広がりを打ち消す波を作り
原点は広がりを持たない色彩であり重みをもたない錘である
音楽の絶え間ない螺旋から人間と自然が発生してきたときにも
原点はそれに先立つ音楽の都市の水路でただのあぶくだった
修飾する声帯だけを持ったレトリックの都市
人間は都市の片隅で茶色の原点に姿を変え
緑の原点と分子結合して共に愛のない踊りを続ける
声帯は愛も憎しみも分解して寄せ集めて建築に変えてしまう
都市は構造を脱ぎ捨てて声帯を切り刻み
原点は都市から滑り落ちて音楽が忘れてしまった自由をすべて思い出している
音楽の都市を守ろうとするいかなる正義も鳥の死骸のように意味がない
都市の声帯を知ろうとするいかなる真実も落し物のように居場所がない
夜が始まろうとするとき原点は呼吸をやめ
朝が始まろうとするとき都市は崩れ去る
声帯は死んだまま人間の原理に逆らう歌を歌い続け
音楽は流れをいくつにも分けて人間をどこまでも迂回する
昼が始まろうとするとき
すべては逸脱したまま、無構造のまま、死んだまま、
高らかにジャズを鳴らし始める