硝子に映った駱駝
草野春心



  硝子に映った一頭の駱駝は
  あなたのまわりのどこにもいない
  オアシスには細かい霧の粒が浮かび
  かれの毛並みを気高く妖しくみせているが
  大きな二瘤ふたこぶにかなしさだけを載せて
  光と光のかすかな隙間に かれは とぼとぼ引込んでしまう
  あなたのまわりのどこにもいないその駱駝を
  あなたはいつまでもさがしつづけている




自由詩 硝子に映った駱駝 Copyright 草野春心 2014-07-19 23:01:44
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