夏の幽霊
ただのみきや
尾鰭も背鰭もない者だから
スクラップブックから拾ってきました
この気怠さの海を泳ぐ
艶めかしい夏の生き物たちを横目に
白い爪痕も心地よい
日焼けした空をまる齧りにします
スイカの味 海水浴の味
虫捕りの味 花火の味
欲しくて欲しくて手に入らなかったもの
好きで好きで仕方がなかったひと
胸いっぱいに広がる
懐かしい味わい
いつかの夏が照り返し笑っています
誰かが打ったホームランボールみたいに
吸いこまれては消えて往くのです
男前な夢の 抜け殻だけを残して
《夏の幽霊:2014年7月19日》