全員が敵
千波 一也
わたしの総てを
受け容れるだなんて
わたしにも出来ないことだわ
だから、
わたしの総てを
受け容れてくれる人なんて
いるわけがないと思うのよ
わたしの
些細な何かをひとつでも
喜んでもらえたら幸せよね
誉めてもらえたら幸せよね
認めてもらえたら幸せよね
ほんの些細なことだけで
わたしは十分に幸せなのに
ひとつを受け容れてもらえたら
もうひとつ、もうふたつ、と
許してもらいたくなっちゃうの
もしもそれが
叶わないときには
わたしはうんと憎んでしまう
嫌いにもなる
恨みもする
そんな馬鹿なわたしだけどね
世の中の全員が敵、だなんて考えには
至ってないの
わたしの
些細な何かをひとつでも
拒む人がいたとして
叱る人がいたとして
哀れむ人がいたとして
それは
敵ということにはならないものね
仮に
わたしの
総てを受け容れてくれる人がいたとして
それは少し、いや、かなり
信じられないわ
そんな不審な人を
味方だなんて言えないわ
狭くて広いこの世の中は
全員が敵ではありえないし
味方でもありえない
それゆえにこそ
奥深くて
有り難くて
飽きようのない
人生なんだと思うのよ
わたしのほかは
或いはわたしも含めて
全員が敵、という考え方は
半分正しくて
半分間違えているわけね
おわかり頂けるかしら