潜る
凍月

今この目で見える世界それは所詮は眼球の中の世界しかしこの世は広いだろう途方もなく出口も無く端も終わりも無い世界だがそれも分からない自分は何も分からない自分とは何か?他人を知る前に見てみたいそんな小さく素朴で純粋な疑問純朴な好奇心つまりは知りたいだけだ最初はただそれだけだったそれ以上でもそれ以下でも無い異常の日常の近況くらいたったそれだけだ何がどう転ぶか分からないだから苛つくいつしかそうなるそうなった何かに苛つく度に自分の醜さを噛み締めなければならないそれが悔しいのか悲しいのかそれも苛つくのか何なのか分からない分かろうとしているのか分からないのか差別も嫌いだだが自分が差別をしていないかと聞かれればはいとは言えないだから自分が嫌いだ鏡を見ると割りたくなる水面を見ると逃げたくなる人の悪口を聞くのも嫌いだそして自分の事を棚に上げて苛つく自分が嫌いだ一体どうすれば良い?憎むな愛せよ愛するって何だ?憎むって何だ?感情って何だ?分からない分からない色々と知っているようで実は何も知らない雑学やら役に立つ知識やらそういう事は知ってるのに自分の事は分からない俺が知ってる俺って何だ?頭の中でよく分からない映像が駆け巡る一瞬のブラックアウト黒い穴眼球浮き出る血管上がっては下がる体温瞼の裏の地獄ペンでぐしゃぐしゃと書いたゴミのようなものそれが俺か?部屋の天井がぐるぐる回る吐き気がする腹が痛い身体中が痛い空気を吸いたい生きたいつまり死にたい呻き声以外の言葉を忘れる何も見たくないもう何も知りたくない生きてる意味って何だよそんなものがあるとは思えない意義を作れば生きやすいから墓があれば逝きやすいから?死にたいのは誰だ?生きる権利?死ぬ権利?権利ってなんだそんなものあるのかあって良いのか音が漏れても気付かない助けを求める人に気付かない気付いたら気付かない振りやはり人間は自分の事しか考えられないから無理なんだ諦めようぜ誰が叫ぼうが無駄だだって自分がそうだからどこかで割り切れとそれが賢いと賢いって何だ非情だって事か捨てる事が出来るって事か誰か教えてくれよ答えを知ったって関係ない答えを知ってもそれで納得するかは分からない目が勝手に開く頭が勝手に動く指が勝手に文字を打つ吐き出す為に心地良く生きる為に生きて良いのか生きてはいけないのか許されるのか誰が許し誰が許さない誰が決めた?いちいち押すなルールを守れ何の為に知るかそんなもの普通とか呼ばれる意味の分からない人間達がよく分からないまま決めたんだ何故普通でありたい?異常が良い変な方が良いつまらないつまらない生きてる事がつまらない意味が分からない五月蠅い五月蠅い黙れ黙れもう何も聞きたくない誰か耳を潰してくれ誰かこの目を潰してくれ誰かこの臓を掻き回してくれ俺は何を言ってる?俺は一体どうしたんだ?もっと子供の時にはこんな事考えなかったのに何でだよ俺は何なんだよ気付いてくれよ俺は取り繕ってる内側を外側で隠してるいやでも気付かないでくれ気にしないでくれ今のはナシだから気にしないでくれ理解しないでくれ多分俺は何処かで孤独を望んでるいやそれは嘘だ寂しいのは嫌いだだけど独りが好きな時もあるだけど妬く時もあるプライドって何だ何であるんだ醜い醜いいやそうなのか?しっかり考えて言ってるのか違うだろう表面だけで適当で異常と正常の間辺りを時と場合とその他諸々によって実に都合良く彷徨ってるそれが嫌だ全部が嫌だいや全部は嘘だでもそう思う時もあるこれは掃き溜め吐き溜めだ耐えられない前に吐き出す防衛手段だ何から守る?何を守る?何故守る?守る価値は?意味は?自己防衛?過剰防衛?防衛ではなく攻撃か?分からないんだよ真理は何処だ無くて良いけれどあるか無いかだけはせめて知りたいもう考えないで良いのかまだ考える必要があるのか面倒くさい何故俺は思考する思考は時に楽しいが思考のせいで苦しむのだリスクか?何故リスクはある?リスク無しではいけないのか枷がかかって動けない鎖で繋がれ動けない縄で縛られ動けない体が重くて動けない生きなければ死ななければ脅迫観念がのしかかる無数の手が掴む掴まれれば離れない融け合いくっ付き同化して混ざって段々黒くなる骸骨がカタカタと笑う肩がせわしなく動く水銀の汗がボトリと落ちる目の前を意識出来なくなる耳に入るのは狂ったノイズ鼻を刺すのは私の腐臭その身を這うのは人間だけだ骨が見えるまで肉が落ちる焼け爛れた皮膚はもう自分の一部では無い叫んで消えた声の音は何処から生まれたか分からない右を流れるいつかの景色は左を横切る蠅の音にただそれだけで失われる今この手の中に漆黒の狂気があったなら俺は誰を殺すだろう幽霊のようなイメージが脳髄の奥で光を放ついざかいといざこざが発展して争いや闘いが発展して行き着く先は何処なのか耳障りな声が響くもうそろそろ疲れてきたか?吹っ切れたら何て事は無い扱いきれない自由を前に指を咥えて血を流すズレた論争ばかりして根底の過ちに気付かない熱で揺らめく地面熱に魘される病人熱で焼き切れるコード熱で消し飛ぶ人の影見たくも無いこの景色が無ければ自分は生きられない悔しいがどうにもならないのだと割り切り今日も明日も生きる春の微笑みから目を背け豪快な夏を避けてゆき儚い秋にもの思う事無く静かな冬をやり過ごす嫌いな事から逃げ続け悪態ばかりついている気付いているのは確かだがそれが何だと言うのだろう決まった物は何も無く疲れた痺れはいつか消え足りない何かを埋めようと心の何かを埋めようと霧の中で無様に踊る気分の浮き沈みで俺は動くそう思っただけそう思ってみただけ丸い四角いどちらでもない意味は無いものに意味を感じる無意味な事に意味を感じる二秒経ったらもう忘れてる永遠に流れて止まらない断続的な時間の中柱にイニシャルを刻むように筆記具が紙と擦れ合う今自分が生きていた何かしら考えていたその証をささやかにでも残してみたい残していたい目が合ったから何なんだ隣にあるから何なんだ意味は無い価値も無い触れ合う袖にも縁はあるらしいけれど今は触れ合う袖など無いだろうか生きる意味を感じたいここに居る意味を感じたい不安で不安で仕方がないから今日を生きるのが不安なのだゴミを集めて山にして一体何の意味がある満足なんて決して出来ない底知れぬ欲望が渦巻いてる誰かの為に生きてみたい誰かの為に死んでみたい寝たまま気付いたら死んでいたい顔を蹴り飛ばしたい耳を引っこ抜きたい動きたくない幸せなら良い幸せでないのは嫌だ知るかそんな事何を言ってるのか分からない同じ事ばかり繰り返すそれが人間それが俺自分の事を知って欲しい自分の人生は自分のものそうだろうがそうで無かろうが意識が空中に浮いている肺を濁った空気が灼く心の卑下の念が妬く存在を確立したい違いを意識する度に自己嫌悪が溢れ出る自分に無いものを羨望し他人の背を見て生きるこの世で生きている絶対の証拠など無い主観によってすべてが変わる反転する世界がぐるりと回る人形が歩く人形が喋る何を言っているのか分からない冷たい水を浴びたように収縮する細胞達一定の方向に何も考えずに進む左足の腿からは骨が突き出る右足の踵がすり減って消えるもといた場所へまだいない場所へ唇を噛み刃を研ぐ逃げ続ける為に一歩を踏み出す諦める為に立ち止まる生きる為にただ殺す楽しんで生きたい願いとは欲望の丁寧語綺麗であればその方が良い美しければその方が良い何も知らないのならその方が良い意味があるならそれで良い時間には勝てない築き上げた自己は地獄の中に見えるのはただ氷山の一角そのたったの四分の一人間には四つの窓があるらしい自分も他人も知ってる自分自分は知ってて他人は知らない自分自分は知らずに他人が知ってる自分自分も他人も知らない自分じゃあ結局どれが本当の自分なんだ?たった今呻き声のような贖罪を言ったのが自分だそれが紛れもない自分だわざわざ確認するまでの事でも無いのかもしれないけれど突き詰めてみたら結局何なんだろう?沢山の数の何かがどうにかして出来た何か足先から肩や胸まで見える頭は触れる事が出来るしかし心は決して見えない当たり前なのか自分の顔はこの目で直接見れないもの光が鏡に辿り着くまでに鏡から眼球に吸い込まれるまでに空間に溶けて変貌を遂げて逆向きに進む時計氷塊の融解と固定流動した心も今では硬い漂流した過去は何処に行く漂着した木切れを拾い上げ白い砂浜に放り投げ何処とも知れぬ砂漠を歩む歩き疲れ捜し疲れ赤い太陽の血に浸かり青い湖に身を浸し暗い廃墟に身を隠し腐った死体に魂を宿す直視出来ないくらいに滅びた自分がガラスの破片から嘲るように笑う天井から垂れる縄の輪足元に転がる鉈薬の入った瓶手段は知っている道具は揃っている恐怖だけが支配している黒い血反吐黒い心黒い空間黒い本ページを捲れど真っ黒で憎悪の言葉が延々と何重にも何重にも綴られて裏返るのは低い声裏切るのは周りの人の期待言葉の裏に凶器を忍ばせ心の中に狂気を潜ませ棺の中に死体を隠し身体の中に死体を隠す気付いていない自分は既に死んでいる白骨は焼かれて灰となりまだ動く心臓は肺の場所に未来ある胚を潰し脳まで取り出し叩き潰す両手を縛って吊しとく花の香りがする蠅が飛び交う山羊と豚と左手と蛸地獄とは何処にあるのか偶に知りたくて堪らなくなる舌が動く気味が悪い脈打つ血管に恐怖を覚え見える獣より見えない怪物知らない魔獣より気付けない悪魔水面に映る月に映ってる窓を開いては閉じ鍵をかけ自分が人間である事の賭け今悩む時点で何らかの負け人が上から飛び降りる為の崖過去と未来による卑下に幕が上がって始まる悲劇人生と云う名の寸劇何も知らずに踊るなら良しそうはいかないのが人間と云う葦一本だろうと千本だろうと変わらない手を繋いでも心は離れ手を差し伸べても意味は無く喩え手を伸ばしても死は止まらない誓えよ我よ内側の者よ朽ちゆく宮殿待ち構える豹変割れた破片心の欠片切り刻まれた何かの欠片見てはいけない不思議な祠まだ入れずまだ分からない自分の深淵にはまだ入れない古代の神託など解らない足を踏み入れて良いのだろうか足を踏み出しても生きていれるだろうかそれすら判らぬ闇の底点滅するのは世界の光怪しく瞬く異常の光ズレた世界が産声を上げる壊れる者の叫びが上がる吹き付ける粉は何だろう毒か麻薬か薬か否か吹き抜ける風が生暖かい不愉快な色彩ごときは生温い黒煙を絶え間なくあげて走る列車に線路なし思考回路の上を蹂躙し轢いた希望は数知れず大きく大きく成長するのだその空間には何があるのか洞窟を地下へ地下へと潜れば見つかるものは使用済みの核燃料未来に何も残さない厄災だけを包装し見た目を隠してカタコンベのように地下に共同墓地に棺が一つ黒い大きな塊だ人間は無駄に大きいと気付ける為にそこにあるたった独りで待っている死ぬ時はそこへ入るんだろうよそれの蓋には装飾がある浮く二つの眼球狂った王冠支配の足跡笑う林檎罪の喉仏舌を出す蛇は対になり叡智を我がものにせんと毒牙をむく林檎の台座を支える手二本の弾頭中央には断頭台断ずる為に非ず狂気と恐怖により確立する処刑具手首を繋いで捕獲する悪意の結晶手榴弾二つ時計が一つ差す時間は六時悪魔の数字倒された砂時計もう動かない鎖で繋がれた手錠は束縛を二つの弾丸と南京錠すなわち凶器と拒絶の証六本指の手は理の外に逆さまの幾何学的な神背徳かつ冒涜背骨という我等の柱肋骨の中の心臓檻と命絞首台裁きと恐怖二本の鉈肉を斬る道具イニシャルと死の数字四回叫べ安らかに眠れ安らかに眠れ骨盤支える物それに刺さる剣貫くもの交差する黒い刃灯を刈り取る鍵ただし合致する鍵穴は無い百足と蠅死と悪と恐怖と闇そして骸骨骨盤よりも下にあり無表情に笑う死体のように重いそれをずらし中を覗けばあるだろう更に下へと続く階段灯りなど無い光ならあるが希望は無い棺の中にいるとはつまり死んでいる人間これより先は混沌の世界そんな予感が背筋を凍らせ足を留まらせ呼吸と鼓動と思考すら止めしかし自分は何の為にここに居るのか何の為に来たのか足を踏み入れて進んでしまおう四分の一のその奥へ水面の下の氷山へ階段を一歩ずつ乾いた音が下へゆく崩れゆき生まれゆく階段を降りる暗い世界で聞こえる自分の叫び


自由詩 潜る Copyright 凍月 2014-07-17 13:33:37
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