義姉
ただのみきや

義姉の手を握った
痛くない程度に強く
妻以外の女性の手を握ったのはいつ以来か
兄と義姉が結婚したとき
わたしは高校生だった
男二人兄弟だったから
義姉ねえさん」と呼ぶのも恥ずかしかった
義姉は変わった人だった
おっとりしているようでもあり
家族が集まって食卓を囲んでも
率先して動くタイプではなく
ひたすら座って食べている人だった
もともと背が高かった義姉は
会う度に横にも大きくなっていった
あまり話はしなかったが
そんなマイペースな義姉が
嫌いではなかった
もうあまり動かせない
義姉の手を握って
何もできなくて ただ
小さな声で祈った
どんなにひねくれてみても 所詮
最後にはキリストの名に隠れることしかできない
役立たずのもと牧師
塩けを失くした塩の如く
義姉の好きな野球中継が始まった
自然な笑顔を意識しながら
わたしたちは
緩和ケアの病室を後にした

    

          《義姉:2014年7月16日》






自由詩 義姉 Copyright ただのみきや 2014-07-16 21:46:07
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