川が
……とある蛙



空を目指していた筈の
こころの滴が山の頂きにぶつかり、
雨となって地上に降り注ぐ

雨は山肌を通して幾筋もの小さな流れとなり
あるものは地中で濾過され清烈な泉となって地上に現れ
あるものは地表を滑り落ちて渓谷に集まり
川となって流れ出す。

川は岩とぶつかり、若いこころの滴は
巨大で無骨な岩とぶつかり砕けて、また川に戻り
谷を削り、川底を引っ掻いて次第にうねりをます。

川は山の懐に抱かれている間は
縦横無尽に暴れまくる
それでも山はびくともせず
川が暴れるにまかせ、
しかし、山は川をなだめている
川は山の懐に抱かれたまま
やさしい流れとなって
次第に平地に流れてゆく

川は平地で畑を潤し
水田を潤し
そして町の人々を潤し
海へひたすら流れてゆく

河口に辿り着いた川は
山で削り取った山の欠片を
海との境に散布して州を作る

州はいろいろな動物たちの住むところとなり、
吃水湖すら作って豊富な栄養を水生生物に与える
山がなければ海は死ぬ
川がなければ海は死ぬ

海に注がれたこころの滴は
また空に向かって昇って行く
また空に向かって昇って行く
空はこころの滴の始まりで、
しかも、行き着く先なのだ。


自由詩 川が Copyright ……とある蛙 2014-07-16 20:43:01
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