「ねがう」
小夜

いとしいという気持ちは
どこにもたどりつかない
ただ生きてくださいと
おもうばかり

あなたはもうそれで
十分素晴らしいのだから
なにひとつあきらめることも
うしなうこともない

笑ってほしいとおもった
かなしいまなざしも好きだった
いまここを見ているのか
ここにないものを見ているのか
わからなくて
でも
そのまなざしが好きだった

満ちても満ち尽きることはない
引いていくときを知っていて
きらきらと破片を残していく
たゆたう波のような

何度言葉をかわしても
しらないとおもう
しらないひとだとおもう
そのことに驚きながら
やはり
幸せであってほしいとおもう

あなたが幸せにならない世界は
おかしいとおもう

いただいたものに
沿うのなら
ここからまっすぐ出ていかなければ
明日にでもてのひらを
高く掲げて

そして離れた道は
きっと二度と交わらない

それはとても幸福な
幸福な旅立ちだろう

遠く残像すら見えない場所で
すっかり忘れ去られても
あなたはわたしの生きる
意味になる

だから
生きてください
なにひとつ
あきらめることなく

いつかてのひらを高く掲げて
わたしはここを出ていく
そのときあなたはきっと笑っている
それがすべての答えになる


自由詩 「ねがう」 Copyright 小夜 2014-07-14 23:14:37
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