『水』
あおい満月
つゆぞらの
車窓にぴしゃり
みずのゆめ
ふいに気がついた
目のあった
エレベーターの鏡に映る
水の目をしたあたし
着替えた綿の白シャツの
まとわりつく
抱擁の感触 あ、
またあの腕を思い出した
こうばしい色をした左腕
きらりとした
琥珀色の澄んだ眼差しも
風がふいた
熱い吐息の声が
耳元で谺する
みちびかれるように
階段をおりて
地下道に入っていく
水の音がする
壁に手をあてると
水のつめたい口づけが
あたしの首筋を旅していく
いとおしさのなかの
深い森のみなものうえで
海を交わすぬくもり
めぐりめぐる血の鼓動
空が開けて
ふりそそぐ陽射しに
あたしは目を醒ます
乳房に熱く冷えた感触が
まだ囁いている