笑えるぜ安倍ちゃん、ヒトラーかよ
草野大悟2
お爺ちゃんも、お父さんもそうだった。
僕たちの仕事の要諦は嘘を本当だと言い通すことだ、と言っていた。
そんなこと小学生の僕に言うなよ。
どこかに遺伝子の記憶があったのか、明らかに嘘と誰にでも分かるだろう、と思ったが僕はオリンピックプレゼンテーションで明言した。
「放射能汚染は、東京には及びません。湾内で完全にブロックされています。状況はコントロールされている」
もう世界中が忘れている。
安倍ちゃんが嘘を重ねる度に、原発の現場は蝕まれる。この国は蝕まれる。
安倍ちゃんは、放射能はもちろん生きる怖さを知らない。
産まれたときから豊潤の暮らしを続けてきた。頭は悪かったけれど、金があったし、名門という印籠があった。
国内レベルで留まっている間は良かった。国民は、圧倒的に僕を支持している、そう勘違いして自信たっぷりに国政をコントロールできた。前回、首相になったときは下痢が止まらず、職務放棄した。今度そんなことすると誰からも見放されるぞ、お父さんやお爺ちゃんが墓の下から怒鳴っている。僕は、それが二番目に怖い。一番怖いのはワイフ。
複数のタンクから流れ出た8千万ベクレルの高濃度放射性物質の拡散を、海の表面だけに設置したフェンスで防げるわけはない。常識的に考えれば誰にだって分かることだ。
おまけに、汚染水が排水溝から外洋に流出している蓋然性が極めて高いことが判明してしまった。東電は排水溝出口付近に汚染水の外洋流出を防ぐ対策を講じていない。
「海水の放射性物質濃度に目立った異常はない」
東電の説明を素直な安倍ちゃんは信じている。だって、政治は人を信じ切ることから始まる、と他人をいっさい信じなかったお爺ちゃんとお父さんに教え込まれてきたから。
笑えるぜ安倍ちゃん、ヒトラーかよ。
原発を外国に売り込んだり、消費税上げたり、アホノミクスで景気が良くなったように繕ったり、年金下げたり、憲法9条改正目的で96条改正を狙って時間かかりそう、んじゃとばかり、情念に酔って集団的自衛権を閣議決定したり、手を替え品を替えいろんなことをやってくれる。
「日本が戦争をする国家になることはあり得ません」
また嘘をつく。
無菌培養の安倍ちゃん。自身も含めたリッチな人たちのためだけの国政運営を続ける。
「だって僕、信介お爺ちゃんに褒めてもらいたいし、太郎君が言ってたヒトラーに憧れてるんだもん」
胸の中で、安倍ちゃんはこっそりと呟く。