部屋掃除
まーつん



 掃除、片付け
 ゴミの分別

 始めるまでは厭わしく
 いざ取りかかれば簡単で
 終わってしまえば、
 気持ちがいい

 分っちゃいるけど、先延ばし
 そうして、かれこれ二週間

 休日の朝
 台所に立てば
 いつ落としたのか
 裸足の裏に張り付く米粒
 (食い込んで、微妙に痛い)
 玉葱の皮の切れっぱし
 クシャクシャのサランラップ
 抜け毛に絡みつき、捩れた輪ゴム

 空気は心なしか濁り
 喉にザラつくような

 消耗した我が身は
 日々の生活の垢に塗れて
 豚小屋の豚を笑えない

 嫁さん欲しいな
 (わたしは家政婦じゃないわ)
 それとも、鶏でも飼って、足元に侍らせて
 食卓のゴミをついばんでもらうか…
 (動物虐待? それとも共生? )

 湿気に触れた皮膚に
 見えない埃がくっついて
 もう昼過ぎから、風呂が恋しい
 平日など、作業服を脱ぎ捨て、
 裸で仕事したくなる

 放射能に汚染された海に飛び込んで
 皮膚が焼け爛れるまで泳ごうか
 汚された星の子宮で、胎児に還るまで
 (やっぱ怖いからやめとく)

 ネットを覗けばガザの空爆
 街じゅうが、とっ散らかってる
 子供の足に蹴散らされた
 レゴ・ブロックのジオラマみたいに

 だが、
 血を流すのは生身の人間
 あの日、三年前、震災の日本を案じ、
 励ましてくれた、ガザの子供達も

 武器輸出の、規制緩和に舵を取り
 人をゴミ同然に扱う為の道具を
 世界中にばら撒きたいらしい
 今日の日本政府

 幾ら掃除しても
 埃はまた降り積もる

 幾ら反省しても
 過ちは再び犯される

 知ったかぶりの匿名家が
 諦めもまた、生きる知恵と
 ネットの海で囁く

 泡のように
 浮かんでは消える
 無責任な言葉

 そう、俺たちは
 生まれついてのろくでなしだと
 そう自分を説得できれば
 世の中の理不尽に
 いちいち腹を立てずに済む

 我が手で、
 人を傷つけて
 悔やまずに済む

 そうして
 汚れていくんだ
 この部屋のように

 投げっぱなしの請求書が
 良心に支払いを求めている

 曇った窓ガラスが
 澄んだ目で世界を見ろと
 促してくる

 それで
 俺は財布を軽くして
 生きるための借りを返し
 雑巾を絞って、窓を拭きあげる

 その背中を撫でる
 微かな声音

 押入れの奥に突っ込んだ
 少年の日のガンプラが
 身動きもならず
 泣いている

 僕を見捨てないで、と
 子供の声で、泣いている

 握りしめた
 ビームライフルを
 手放すことも、ないままに


自由詩 部屋掃除 Copyright まーつん 2014-07-11 13:56:11
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