さらわれて、ゆく
千波 一也
達者でありましょうね、きっと
必ずや笑んでおいででしょうね
喜びようの一つ一つを隔てなく
過ちようの一つ一つさえ隔てなく
見届けてくださった、あなたですもの
わたしがなにを望もうと
それは全く叶わぬのでしょう
忘れるまでは、離れるまでは、
わたしを待ってくれるのでしょう
もう、きれいになった頃でしょうか
遠いむかしも遥かな未来も
さらわれて、ゆく
引き寄せられて、引き連れて
終わりのない継ぎ目のまぶしさは
青くあるのですね、永遠に
まるで、鏡の向こうを遊ぶみたいに
振り向く言葉のやさしさだけが
聞こえませんか
さらわれて、ゆく波の
さらわれて、ゆく空の
さらわれて、ゆく時の