柔らかい杞憂
凍月
いつか空が墜ちる時
地球が融けたようなこの地上で
僕は誰に祈るのだろう
空が迫り来る
黒い黒い裂け目が増える
不自然な黒がウイルスか何かのように巣喰う
空は海の青を映しているらしいので
空が血液より赤い今は
地表は湧き出た熔岩の色で染まっているのだろう
後ろを振り向くと影法師
何故コイツは俺よりでかい?
血管が浮き出て赤く光る
ほら、空が墜ちてくる
天が音を立てて崩れゆく杞憂
いや、此方が空か?
大地に向かって墜ちる僕達
祈る対象などない
祈る暇など無い
最も平等たる死に祈れ
許されたのはただ、
断末魔の悲鳴だけ
いつか空が墜ちた時
どんな音がするのだろう