発見Ⅰ
Giton
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傍においときたいって? ‥あのテディベアみたいにかね?
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それはもうとても幼い日のことで、記憶のない年齢と心理学者が言う年代に属し
そんなことがあったことさえ、くりかえしくりかえし思い出しては語っていた両親は
もう語るのにも飽きて、その語りを聞いた記憶さえぼくは忘却の白い箱に仕舞いこんでいたのだけれど
あるときぼくは押入れの古いダンボール箱にその大きめの人形を見つけたとき
蘇ったのは仄かな見覚えと、ぼくがそれを呼んでいた遥かな名前のほかにはなく
その名前を口にしてみると、胸には押入れの奥のように匂う奇妙な恥しさが満ちるのだった
長めの毛糸くずを全身に貼り付けられて、ふわふわだったろうその縫いぐるみの
肩から胸にかけては、いつも抱かれて幼い頬の摩擦を受けていたらしく
毛糸はすっかり取れて白い肌を露出し、彼の瞳の2つの黒いボタンは
じっと忘却の向うをみつめているようさえ思われた
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そうか、そうだったのかと、ぼくはしかし心からやすらかに納得し
ようやくようやく自分をみつけたうれしさに、その日ぼくは心底みたされて
これから贈られるテディベアはしっかりと抱きしめていいのだと、やさしく自分にゆるし
そうして、ほんとうにこれは誓って言うことなのだけれど、それ以来ぼくに贈られたどのテディベアも
幼い日の過ちのように押し入れの隅で忘れられてしまうことはもう決してなかったと私はここに誓う
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