【 ちくわ 】
泡沫恋歌

冷蔵庫に賞味期限切れの
ちくわが一本残っていた
二日しか過ぎていない
まだ大丈夫だろうと
丸かじりする

食べながら
ちくわの穴と対峙する
もしかしたら……
別世界が見えるかも知れないと
穴から外を覗いてみる

ジィィィ――――

一見無駄にみえる穴だが
そこにはちくわの
「美味しく食べてね」
と、いう
メッセージが込められていたのだ

時として
胡瓜やチーズといった
異物を挿入されたり
塞がれることもあるが
かまぼこや平天にはない
この穴こそが
ちくわのアイデンティティ!

安いからと
考え無しに買ってしまう
五本入りちくわだと
いつも一本残ってしまい
賞味期限切れで
ゴミとなり
捨てられることも多い

食材としては
おでんに入れるか
天ぷらにするか
そのまま切って食べるか
レシピにバリエーションがない
そういう意味で
ちくわって奴は自己完結している

そんなことを
つらつら考えている内に
一本のちくわは
私の胃袋に収まった

ちくわよ
今日も美味しく ありがとう!




                               2014/07/03         


自由詩 【 ちくわ 】 Copyright 泡沫恋歌 2014-07-03 11:15:50
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