再会
nm6

自分に酔ってはいけない
あのころ
きみに酔っているだけで
ことばが出てきたのだ
あるいは酒に
たぶん
ほんとうはどこかにあって
しまったままの
ぼくのことばは
どこへいったのだ
あのころ
乾いていた
部屋に風が吹いていたし
畳に太陽が落ちていて
ぼくはただ転がって寝ていた
あのひだまりの
ふきだまりの
あのころ
ぼくのことばは
指先から光線のように
口先から草原のように
まぶしく
ことばが出てきたのだ
きみに酔っているだけで
あるいは酒に



再会を、いつか会えるかと思っていた彼女の、遠くでうっすらと光っている金色の、均一にひろがるかなしみが、忘れた、ここにないことが続いた世界が、とり替わってすっかりと、もう帰らないその再会を、ずれた線を涼しく通り過ぎて、なぞる、すきとおる白と、やわらかい黒と、いつか会えるかと思っていた彼女の金色が、やわらかさの忘却と、均一にかなしく広がって忘れた浮遊に、いつのことだったかやわらかさの、春、指先がわらいはじめた、口元が突き刺して、もう戻れないよ、わかったよ(わかっていない)、帰るよ(まだ帰らない)、再会を――



自分に酔ってはいけない
あのころ
指先から光線のように
口先から草原のように
まぶしく
ことばが出てきたのだ
きみに酔っているだけで
ことばが出てきたのだ
あるいは酒に


自由詩 再会 Copyright nm6 2014-07-02 00:48:16
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