Atom Heart Mother
藤原絵理子


牛が草を食む音が 聞こえてくる
静かな午後の平和に 仔牛は乳房に寄り添う
サンエチエンヌの草原で 見渡している
あの日 旅する雲は東へ アルプスを越えて


熱に浮かされたような 隊列の行進は
祖国の大義と 神の祝福までも手にして
誇らしく 栄光に輝いて 涙を隠して
うねる金色の波に 勝利を信じて


町の鐘の音は 爆音に途絶えた
紡ぎ車の糸は 声を潜めて こと切れた
勝利の果てに 待っていたものは 


帰らない恋人は 糸杉の並木道の彼方に
ひまわり畑の 地平線の彼方に
降り積もった 時の灰が 髪の色を変えた


自由詩 Atom Heart Mother Copyright 藤原絵理子 2014-07-01 23:16:25
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