ハオルシア オブ ツーサ
衣 ミコ


一番早くに鍵を手に入れたのはハオルシア、君だったね
薄暗い石像の並ぶ地下室に
大人たちが隠した小さ過ぎる穴
逆さまの天井に光るひとつ星
巡礼者だけが知っている秘密
(打ち明ける、打ち明けない、打ち明けない、打ち明ける)
夜明け前の暗闇の彼方で
鳴いている大鴉
恐ろしさに目蓋を閉じても逃げられないなら
もう 前を向いて

*

今 吹いている風の事
君が赤い砂漠のひと雫だった頃の
左肩まで砂に埋れて
キャラバンの男に行きずりの恋をしていた頃の
黄金の玉座に座る高飛車な女が
君を“はすっぱ”だと笑ったあの頃の
君は鉱石みたいな瞳にいっぱい涙を溜めて
今でも覚えてる
君より覚えてる
それから長い月日が経って
それでも地平は世界を二分したまま
君はまだ泣きやまなくて
僕は途方に暮れたまま

*

(
すべての物語がひとつの解を出す為に紡がれてきたのなら
)

*

一番早くに鍵を見付けたのはハオルシア、君だったね
巨大化した石像の並ぶ地上で
子供たちが暴いた大き過ぎる穴
右回りに針を正した時計の先のひとつ星
見上げれば公然と輝く秘密
(打ち明ける、打ち明けない、打ち明けない、打ち明ける)
夜更けの暗闇の彼方で
鳴いているのもまた大鴉
恐ろしさに目蓋を閉じても逃げられないなら

前を向いて



自由詩 ハオルシア オブ ツーサ Copyright 衣 ミコ 2014-07-01 13:41:17
notebook Home 戻る