タルカス
藤原絵理子


蒔いた種は とっくに薹が立っていた
奇妙な敵との戦いに 明け暮れている間に
そんなに夢中になっていたのか


無限軌道の 乾いた吼え声が 引き裂く
勝利が与えた 美酒の入った 革袋だった筈の
参謀本部の部屋に 血は流れない
土埃もない 硝煙の匂いも 断末魔の叫びも


司教は祈るのだ 鐘の音を高らかに
嵐が過ぎ去るのを 息を殺して 待っている
神は何度も死に 何度でも生き返る
積み上げた石の 年月が崩れても 再び


海原を見渡す丘に
燕の群れは南を指して 飛び去る
眼下の戦場には 言葉を残さない


自由詩 タルカス Copyright 藤原絵理子 2014-06-30 23:00:43
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