汗よ この地球の大気に飛び出せ
ichirou
久々の晴れ間に浮かれていた午後
汗で膨潤した角質層が汗腺を塞ぎ
汗腺から出られなくなった汗は
俺の真皮の中で暴れている
汗よ
もがけ
閉じこめられた苦しみに
負けるんじゃない
皮膚はもう赤い
痒みもやってきた
汗よ
あせもから飛び出せ
膨潤した角質層を突き破り
外に飛び出せ
汗よ
お前には
俺の皮膚は狭すぎる
俺の体温をバネにこの地球の大気に飛び出せ
俺の表面に塩化ナトリウムを結晶化させ
ヒリヒリとしたあせもの感覚を土産に残して飛び出せ
汗よ
お前を生み出したのはこの俺だ
そして
俺はお前を生み出しながら
お前を閉じこめる
俺は体温を下げるためにお前を生み出しながら
お前を閉じこめて気化させない
この生理現象
このあせも
この不条理
汗よ
あせもから飛び出せ
この不条理を壊せ
この地球の大気に飛び出せ