よいちとだいだらぼっち
……とある蛙

よいちがいちどだけ出会った日
だいだらぼっちに出会った日
サクラの花散るやまのみち
風にふかれて舞う花弁(はなびら)と
花弁を追う犬の子一ぴき
よいちは小さな村の子で
姉にはぐれて泣いていた
山より大きなだいだらぼっち
小さな小さなよいちを見つけ
大きな大きなてのひらで
やさしく頭をなでながら

どこのこ
だれのこ
泣きやまなぁ
やまのいきもの
悲しくならぁな

ひびきわたる大音声(だいおんじょう)
小動物はみなおそれ
首をすくめてやり過ごす
山三つ越えたさとの犬
おもわず昼間に遠吠えする
だいだらぼっちは迷い子を
慰め いたわり声かける

どこのこだれのこ
おしえとくれ
やまからさとへつれてくわ

ひびきわたる大音声
子供はきょとんと泣き止んだ
だいだらぼっちのひげづらに
こわがるそぶりもみせなんだ
だいだらぼっちはよいちをつまみ
やまのようなかたにのせ
そのまま山からくだっていった。

とちゅうの山道に村人が
よいちを探してたいまつで

よいち〜
よいち〜

と呼ばわった

よいち〜よいち〜

ッと声を涸らす
だいだらぼっちは村人に
気づかれぬようにそっと
よいちをじめんにおろす
よいちをそっと山道の
みちのはずれの道祖神
その脇によいちをそっとおろす

もう泣くんじゃないぞ
もうはぐれんじゃないぞ

とてもやさしくこういった

よいちは頷き
よいちはてをふる
だいだらぼっちも手を振って
そのまま山に消えていった。
村人ひとりも気づかぬうちに

だいだらぼっちはそのうちきえた
二度と山にも現れなんだ


自由詩 よいちとだいだらぼっち Copyright ……とある蛙 2014-06-30 15:36:11
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