凍傷
凍月
君の瞳から雫が
水滴の音だけが轟く、洞窟の
石筍を生むような澄んだ雫が
空間を裂くように
時を貫くように落ちた
一部は落ちる間に水蒸気となり
一部は冷たい大地に染み渡った
今年の冬が寒いのは
君が零した涙のおかげ
今年の冬が美しいのは
溢れた君の涙のおかげ
身を切る寒さの何倍も
君の涙の方が辛いよ
人も殺せる氷柱よりも
君の涙の方が刺さる
指は悴んで動きそうもない
心臓もろくに動かないらしい
睫は凍り
視界が白く白く
僕の心は
凍傷で壊れそう
一粒の雪は君の涙
凍片となった君の雫
結晶は煌めき
そして消えて
あなたの姿を思い出す
永久凍土
融けない大地
足がくっついて離れない
君の顔をもう一度見たいのに
涙の吹雪で見えやしない
この極寒の中で唯一
温かなものがそこにあった
視界が揺らぎ
ぼやけ始めた
目の途切れ目から頬を伝って
君の涙の中に混じって
一片の雪となって消えた
息も出来ないくらいの寒さ
鼓動は止まり
震えは止まらない
思考は止まり
涙が止まらない
君からの凍傷が僕を融かす
朽ちゆく者よ
元あった場所へ
永久凍土の上に崩れ落ち
君の涙に埋もれて眠る
君の凍傷で壊れて消える