数学的思考能力の欠如
時子



今思えば、私は最初から躓いていた。


小学校一年生の算数の授業。

たす、ひく、たす、ひく。

簡単な問題でも両手を使う。

両手で足りなければ両足を使う。

えんぴつ、消しゴム、定規、赤ペン。

たす、ひく、たす、ひく。


それでも足りないものはわからない。

宿題ができなくて先生に怒られる。

ひく、ひく、ひく、ひく、と泣く。

いつまでも、

ひく、ひく、ひく、ひく。




九九は放課後まで残って覚えた。

ニブンノゴがどのくらいだか想像がつかなかった。

どうして兄妹は一緒に家を出ないんですか?

兄妹の仲が悪いからですか?

どうして妹はいつも置いていかれて、

遅れて、走って、追いつこうとするのですか。


たす、たす、たす、たす。

走る音が響く。


アルファベットが出てきた時には、

問題の意味さえわからなくなった。

サイン・コサイン・タンジェントって

なんの呪文でしょうか。

「同様に確からしい」って、

本当に確かなのでしょうか。

ひく、ひく、ひく、ひく。



今も、


ひく、ひく、ひく、ひく。




自由詩 数学的思考能力の欠如 Copyright 時子 2014-06-29 07:47:52
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