ぷうわり、ぷん
岡部淳太郎

ぷうわり、ぷん
ぷうわり、ぷん

君はシャボン玉のことをこう呼ぶ
膨らんで飛んでゆくさまが
ぷうわり で
弾けて消えるさまが
ぷん なのだろう

ぷうわり、ぷん
ぷうわり、ぷん

君は澄んだ目を見開いて
空に上ってゆくシャボン玉を追いかける
危ないよ
あんまり空ばかり見ていると
足下がお留守になって
転んじゃうよ
はらはらして見守ると君は
ぷうわり
ぷうわり
そう言って
こちらを手招きする

ぷうわり、ぷん
ぷうわり、ぷん

君の小さな身体に良く似合った
可愛い言葉だね
君の小さな身体に良く似合った
透明なシャボン玉だね

ぷうわり、ぷん
ぷうわり、ぷん

君みたいに
生まれて間もない子供たちが
ぷうわり
ぷうわり
膨らむ暇もなく
ぷん
そう言って
あっという間に破裂してしまう
世界ではそんな悲しいことも
起きているんだよ
そんな悲しいことを
そんな言葉をのみこんで
君の走り回る姿を
ただ見つめていた

ぷうわり、ぷん
ぷうわり、ぷん

人間なんて
どうせ大したことなくて
一年なんて
あっという間に過ぎてしまって
人生というのは
そんな一年を何十回か
ただ繰り返すだけで
終ってしまうんだ
ぷうわり
ぷうわり
膨らんで
ぷん
そう言って
終っちゃう
そこでさよなら
僕はまだ
生きてるけどね

ぷうわり、ぷん
ぷうわり、ぷん

君は僕のそんな思いも知らずに
澄んだ目を輝かせて
ぷうわり
ぷうわり
言いつづけている
僕の思いなんて
知らなくても良いんだ
世の中には
知らなくても良いことが
いっぱいあるんだ
ただ君は
そうやって
ぽかぽかの
春の日の下で
ぷうわりぷん を
追いかけて
遊んでいれば良いんだよ

ぷうわり、ぷん
ぷうわり、ぷん

透明な
光に輝くシャボン玉は
いつしか全部消えていった
君は少し残念そうだけど
もう仕方ない
ぷうわり またね
君はそう言って
空の向こうに手を振った
ぷうわり
ぷうわり
飛んでって
ぷうわり、ぷん
消えてった
ぷうわり、ぷん
なくなった


自由詩 ぷうわり、ぷん Copyright 岡部淳太郎 2005-01-23 17:08:02
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