光と闇の詩人
Neutral

詩人は誰もに見向きしてもらえることを望んだ
私たちが時に異性を恋人として求めるように
己の詩を聞いてもらえる事だけを願って生きていた

書いて 書いて
時に声を張り上げ詩を詠って
己の周りに人が集まる夢を見て生きていた

大きくなる声は そこに 光と闇を両方もたらしていった
数多の心を虜にした詩人は
自由を得たと引き換えに自由を失ったのだ

部屋は殺伐としている
どうしてだろうね
息を吸いに外へ出れば
そんなこと なくなるのに

それは、人の群れの中に包まれて
汗水を流し生きられる日々へまだ引き返せたチャンスが
ついに失われてしまった という不幸
ゆるぎない地盤を得て
しかし同時に妬みの言葉をも浴び続けていた詩人だったが
心はまだ失われてはいない

きっとずっとついてくるのだろう
それは自ら築き上げた大きすぎる名誉であり、過ち
だがボロボロになったノートを火にくべて
全ての過去は今、風になった
さあ詩人よ 今こそ お前はお前の空へ歩き出す時だ

どれほどの月日が経っただろう
歩き疲れて かつての記憶だった過去の作品たちが
もう何一つもなくなったことに
やっと彼は気づいた
栄誉を捨てて 自分を本当に本当に
見出したいだけだ
今や 光と闇の詩人だった姿は 見る影もなくなっていた

歩いて 歩いて
やがて道すら失い立ち止まったとき

そこに待っていてくれたのは 彼の詩を覚えていてくれた人達だった


自由詩 光と闇の詩人 Copyright Neutral 2014-06-23 21:55:10
notebook Home 戻る