聞こえた
nonya
読み人知らずの
ささやかな空気の振動を
耳たぶでそっと掬って
外耳道へ流し込む
外耳道の突きあたりの
気弱すぎる鼓膜のときめきを
耳小骨は丁寧に拾い集め
蝸牛の殻に押し込める
蝸牛の殻の中の
悩ましいリンパ液の対流に
苛立った有毛細胞の
貧乏ゆすりは電気信号になる
電気信号フリークの
自意識過剰なラセン神経節細胞は
嬉々としてそれをツイートし
お節介な内耳神経が
さらにそれをリツイートするものだから
すぐさまそれは大脳庁の知るところとなる
大脳庁の直轄機関である
大脳聴覚皮質のラボに送り込まれた
読み人知らずの
ささやかな空気の振動は
ただちにつぶさに解析され
またたくまに正体が解き明かされる
すなわち
聞こえた
声と君が