夏祭り
藤原絵理子


かららん
ころろん

約束してた夏祭り
浴衣の帯は苦しいけど
少し急ぐ下駄の音が好き

髪をあげた少女の瞳に映る
裸電球のあこがれ
くっきりと 影法師が揺れる

うす暗闇で手を引いてくれた
やさしくて 大きな手
抱き上げて眠らせてくれた
不思議に ひんやりした肩

かららん
ころろん…

藍色がしみ込んでくるたそがれ
遠く隔たった年月の糸を結べば
若かった あなたの
喜びと悲しみが見える気がする

下駄を転がす感触がよみがえる
大好きな季節の 大好きな時間
アルバムのページを繰って
青いリボンを確かめてみよう

約束してる夏祭り
並んで歩くのは恥ずかしいけど
少女に戻る下駄の音が好き


自由詩 夏祭り Copyright 藤原絵理子 2014-06-18 22:45:13
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