【 愁雨 】
泡沫恋歌

一片の未練もなく
人を切ることができるなら
こんな憂鬱な雨の中だって
やすやすと泳いで渡っていけそうだ

あなたは繊細だから、と
人にいわれた
それは褒め言葉ではなく
弱い人間だと露呈してしまった
脆弱過ぎる心の在り処

雨に閉じ込められた
閉塞感に苛立ち
窓硝子を伝う
水滴を数えている
一滴 一滴と零れていく

空気遠近法は
遠くのものがぼやけて見えて
近くのものははっきり見える
心の雨が映し出す風景は
なぜか 遠い出来事ほど
鮮明に蘇るのは
どうしてなんだろう

もう空の色なんか
とっくに忘れてしまっているのに
明日は晴れるという希望だけが
捨て切れない

ほんの少し夢をみて
それを壊してみただけの
梅雨の晴れ間に
ぽっかり浮かんだ
――灰色の雲



                               2014/06/16


自由詩 【 愁雨 】 Copyright 泡沫恋歌 2014-06-17 07:24:18
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