小蜂
イナエ

夏の庭には自然が蔓延る
カマキリが三角頭をかしげ 
雑草が繁茂して人間の通り道をふさぐ
葉裏から湧き出る蚊 
這い出すヤスデ
ときには小型の蜂が哨戒し花を個別訪問する

手入れした庭の美観を損ね 
人間を襲う昆虫を育てる蔓草 

たとえ蜂が舞っていようと
虻のような大きな羽音も立てず
牛を殺すスズメバチほどの武器はなく
異臭毒ガスなど持たない小型機などと
気にも掛けず
手袋さえ填めていない素手で
蔓草をめくりあげたわたし
の指を攻撃した縞の先鋒

腹立ち 殺虫に立ち上がったわたし

 人間につけられた名さえ人間に忘れられ
 ときには邪魔にされ 
 踏みつけられ引き抜かれ
 それでもひっそり開く自然の花
 その花粉を運んで触媒となり
 子どもらの食料もらって 
 互いの繁栄に力貸し合い
 平和に暮らしていた小さな蜂

わたしは
精一杯羽根を鳴らした警告を無視し
逃げることなど出来ない幼虫を
握りつぶし
いま 親の蜂を殺そうとしている
周りを飛ぶ蜂の羽音が声になる

 人間に嫌われていているとしても
 人間たちとは争いたくないのだ
 早くこの場を離れてくれ
 
 アリの餌となった幼児の葬送と 
 この地を立ち去る惜別のうたは 
 聞かれたくないんだ



自由詩 小蜂 Copyright イナエ 2014-06-16 10:17:39
notebook Home 戻る